| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-132 (Poster presentation)
里山林内に同所的に生育するサクラ類は、花期は異なるが果実の登熟期が重なっているため、ヒヨドリやメジロ、ハシブトガラスなどによって採食され、種子が散布されている。本研究では、ヤマザクラ(Cerasus jamasakura)、カスミザクラ(C.leveilleana)、ウワミズザクラ(Padus grayana)の登熟過程と樹冠下に散布される種子を調査し、種子散布の過程で互いに影響し合う状態を比較した。
調査は滋賀県彦根市の荒神山の落葉樹を中心とする二次林で行い、各種7個体を調査対象木として、目視による結実数と熟度の調査を行った。樹冠下に開口部面積0.2m2の種子トラップを3個ずつ設置し、落果数、散布種子数を計数した。
登熟時期は3種で異なり、ヤマザクラは5月28日、カスミザクラは5月31日、ウワミズザクラは7月2日から徐々に熟し始めた。ヤマとカスミは同時期に熟した果実を持つ個体があった。ウワミズは両種と登熟時期が重ならなかった。果実は登熟し始めてから徐々に減少し、一ヶ月ほどの間に多くの果実が消失した。樹冠下の種子トラップからは同種の落果が最も多く得られた。ヤマ樹冠下の全種子トラップからは合計206個の散布種子が得られ、多くが同種の種子だが5%がカスミ、20%がウワミズだった。カスミ樹冠下では281個の種子の9%がヤマ、13%がウワミズ、ウワミズ樹冠下では128個の種子の13%がヤマ、7%がカスミだった。
3種の樹冠下には、同種だけでなく他種の種子も散布され、一部であるが3種の間で互いに種子が散布されていた。ヤマ、カスミは登熟時期が重なり、両種の種子を採食する鳥によって、両種の間で種子が散布されやすいと考えられる。登熟時期が重ならないウワミズの樹冠下でも他種の種子が得られたため、鳥が止まり木として利用し、種子を散布していると考えられる。