| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-134 (Poster presentation)
膜翅目昆虫(ハチ類)と双翅目昆虫(ハエ類)は、高山生態系おいて重要な送粉昆虫である。ハチ類の中で特に重要な花粉媒介者であるマルハナバチは、花粉の輸送能力が高く、訪花活性の季節性が明瞭である。一方、ハエ類の季節活性についての情報は限られている。一般に、高山植物の開花時期は雪解け時期と気温に強く規定されている。しかし、もし送粉者の訪花活性や送粉効率が異なれば、ハチ媒花植物とハエ媒花植物の開花パターンと結実成功は、それぞれの季節性と送粉効率を反映して異なると期待される。本研究では、高山植物群集の開花フェノロジー構造と送粉系機能の関連性を明らかにすることを目的とした。
本研究では、2013年と2014年に北海道大雪山国立公園の高山帯において、雪解け傾度に沿って6つの調査区を設定し、各調査区の高山植物の開花フェノロジー、開花量、結果率、訪花昆虫の訪花頻度の調査を行った。
各植物(51種)はそれぞれハチ媒花植物(14種)、ハエ媒花植物(23種)、ハチ+ハエ媒花植物(14種)に分類された。開花パターンは媒花タイプ間で異なり、ハチ媒花植物ではシーズン前半にシフトする傾向があった。マルハナバチの訪花活性は生活環を反映して明瞭な季節性を示したのに対し、ハエ類では明瞭な季節性は認められなかった。ハチ媒花植物の結果率は季節の進行とともに上昇したのに対し、ハエ媒花植物の結実率は季節を通して比較的高く保たれていた。袋掛け処理によりすべての媒花タイプで結果率が顕著に低下したことから、高山植物の種子生産は花粉制限が強く作用していることが示された。これらの結果から、ハチ媒花植物とハエ媒花植物では開花パターンと結実成功の季節的傾向が明瞭に異なっており、花粉媒介昆虫の季節性と対応していることが明らかになった。