| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-135 (Poster presentation)
訪花昆虫の中には送粉を行うことなく花粉や蜜といった”報酬”を持ち去るものが存在し、花粉を持ち去るものを特に盗花粉者という。盗花粉者による花粉消費量の増加は、生殖に利用できる花粉量を減少させるだけでなく、有効な送粉者の訪花頻度も減少させる可能性があるため、盗花粉者は植物の生殖に大きな影響を与えると考えられている。
キツネノカミソリは主に日本に生息するヒガンバナ科植物の1種である。私たちはキツネノカミソリを対象にした訪花昆虫観察の中で、コハナバチの仲間が訪花昆虫の大半を占めること、蕾から開き始めた段階の花(breaking bud)にこの小バチが訪れることで送粉が起こる(breaking bud pollination)ことを発見した。この送粉方法は花の内部で葯と柱頭とが近い位置に存在することで起こるものであり、逆に花が完全に開いた状態では葯と柱頭との間が離れているため送粉が起こりにくく、小バチが盗花粉者となることが予想される。これを検証するため、千葉県の泉自然公園にて野外実験を行った。
小バチ以外の昆虫の訪花を制限する「籠かけ処理」、breaking bud時の小バチの訪花を制限する「籠+覆い処理」などを行い、果実を作る割合(結果率)を比較した。その結果、籠かけ処理の結果率は籠+覆い処理に比べ有意に高かった。また籠+覆い処理の結果率は、訪花昆虫を排除した処理との間に有意差がみられなかった。さらに花や小バチに付着した花粉数を計測すると、小バチはキツネノカミソリの花から大量の花粉を消費していることが明らかになった。これらの結果は花が完全に開いた状態では小バチが盗花粉者として働く可能性を示すものである。