| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-137 (Poster presentation)
タンニンは植物界に普遍的に存在する被食防御物質で、動物が多量に摂取すると有害な影響を受けることが知られている。アカネズミ(Apodemus speciosus)はドングリを段階的に摂取しタンニンに馴化することで、その悪影響を抑制できることが報告されている。しかし、北海道においてアカネズミと同所的に生息するヒメネズミ(Apodemus argenteus)とエゾヤチネズミ(Myodes rufocanus)においては、タンニン耐性能力について検討されてこなかった。本研究では、同所的に生息する上記の3種の野ネズミを対象にミズナラ(Quercus crispula)のドングリを用いて、タンニン耐性能力の種間比較を行った。3種の野ネズミをタンニンへの馴化群と非馴化群に分け、体重の変化などを比較した結果、アカネズミとヒメネズミについてはタンニンへの馴化によって体重の減少が抑制されたことが確認されたが、エゾヤチネズミでは馴化による体重減少の抑制は確認されなかった。また、アカネズミはタンニンに馴化することでドングリのみを給餌した場合でも体重が増加したのに対し、ヒメネズミとエゾヤチネズミはタンニン馴化群においてもドングリのみの給餌では体重が減少した。以上の結果から、ヒメネズミはアカネズミと同様、タンニンへの馴化能力を備えているが、ドングリのみでは体重を維持できないことが明らかとなった。また、エゾヤチネズミでは馴化そのものが確認できなかったことから、ドングリ給餌時において唯一体重の増加が確認されたアカネズミが3種の野ネズミの中で最も高いタンニン耐性能力を持つことが明らかとなった。タンニン耐性能力のこの種間差は、個体数変動におけるミズナラ堅果の豊凶への依存度の種間差と良く一致していた。