| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-142 (Poster presentation)
昼夜を通じて開花し、主に昼行性ポリネーターを利用しているような昆虫媒植物種において、夜のポリネーションの種子生産への貢献度は明らかでない。本研究では、特定のポリネーターの訪花を制限する袋掛け実験を行い、日中と夜間におけるポリネーションが昆虫媒植物の種子生産量に与える寄与を定量的に比較した。袋掛け実験は、九州大学伊都キャンパス生物多様性保全ゾーン内にて、2014年5月9日から6月14日の間、断続的に行った。実験には、エゴノキ Styrax japonica、シャリンバイ Rhaphiolepis indica var. umbellata、ムラサキシキブ Callicarpa japonica、ネズミモチ Ligustrum japonicumの4種の樹木類を用いた。各植物種における開花中の4つの花序に以下の異なる処理を行った。日中(6:00~18:00)のみに袋掛けを行う処理(夜行性昆虫の貢献度)、夜間(18:00~6:00)のみに袋を掛ける処理(昼行性昆虫の貢献度)、日中・夜間ともに袋掛けを行わない処理、日中・夜間ともに袋掛けを行う処理を施した。この各処理を1植物種につき10セット作成した。また、この4つの処理を行う期間は4日間とし、蕾を付けてから処理開始までの期間と、処理終了後はすべての花序に袋を終日かけた。各処理での結実数と処理期間(4日間)の開花数から結実率を計算した。エゴノキ、ムラサキシキブ、ネズミモチの3種においては、日中のみのポリネーションによる結実率とすべてのポリネーションによる結実率との間に違いはなかった。この3種においては夜行性ポリネーターによる種子生産への貢献は無視できることを示唆した。一方、シャリンバイにおいては、昼間のポリネーションによる結実率は、昼夜を通じたポリネーションによる結実率より低くなり、夜行性ポリネーターによる種子生産の貢献が示唆された。