| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-149 (Poster presentation)

ヤブガラシで吸蜜する昆虫の多様性 -みえてきたスズメバチ訪花の生態的機能-

*河辺穂奈美,古川友紀子,川窪伸光,土田浩治(岐阜大・応生)

植物が分泌する蜜には花蜜と花外蜜がある。植物は、花蜜によって送粉昆虫を誘引し、花外蜜によって植食性昆虫を排除もしくは捕食する肉食性昆虫を誘引すると考えられている。しかし、植物で吸蜜する昆虫種の全てが植物にとって有益とは限らず、無益もしくは有害な盗蜜者も存在する。本研究の材料であるヤブガラシは、開放的な皿状の花に露出した蜜腺を持ち、花蜜の分泌量が多い。そのためか、肉食性昆虫であるスズメバチ科等による訪花と盗蜜が報告されている。本研究では、ヤブガラシの訪花昆虫相を明らかにするために野外調査を行い、ヤブガラシの送粉と被食防衛をめぐる訪花昆虫間の相互作用において、特にスズメバチ科の役割について明らかにすることを目的とした。

調査の結果、合計で8目35科58種がヤブガラシ上で確認された。このうち、スズメバチ科の4種を含む23種以上で吸蜜が観察された。また、チョウ目の4種の幼虫とコウチュウ目の3種でヤブガラシの摂食が観察された。これらの植食性昆虫とスズメバチ科を対象に、10分間あたりの観察個体数の季節変化を調査した。その結果、スズメバチ科の観察個体数は8-9月に増加するが、その時期には、チョウ目の幼虫の観察個体数が減少する傾向が認められた。社会性カリバチであるスズメバチ科は幼虫の餌としてチョウ目の幼虫を狩ることから、ヤブガラシの被食防衛者として貢献している可能性が示唆された。本発表では、採集した個体の体表に付着した花粉の分析から、ヤブガラシの送粉をめぐる相互作用についても考察したい。


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