| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-150 (Poster presentation)
昆虫等から食害を受けた植物は、以降の食害を妨げる誘導抵抗性を導き適応度の低下を防いでいる。加えて、被害個体由来の揮発性物質に曝された無傷の隣接個体でも誘導抵抗性が生じる植物間コミュニケーションという現象が報告されている。植物間コミュニケーションの生態学的な重要性や進化の背景は未だ明らかになっておらず、それらを解明するためには、より多くの種を用いて植物間コミュニケーションの影響を検証する必要がある。そこでハンノキ、ヤマアマドコロ、チゴユリ、オドリコソウ、ナンキンハゼを対象に、揮発性物質を介した植物間コミュニケーションにより生じる食害応答を検証した。
各種の野生集団において、無処理、切除処理(測定個体の葉を切除)、曝露処理(葉を切除した個体からの揮発性物質に測定個体を曝露)、袋掛け処理(葉を切除した個体に袋掛けを行い測定個体の曝露を防止)の処理を行った。
その結果、ハンノキでは無処理に比べて切除処理及び曝露処理で、被害葉数の減少が確認された。また、チゴユリでは曝露処理でのみ被害葉数が減少した。さらにオドリコソウでは、無処理や袋掛け処理に比べて切除処理及び曝露処理によって、アブラムシに寄生された個体の割合が低下した。他の2種では処理間の差は見られなかった。以上のことから、ハンノキ、チゴユリ、オドリコソウの3種において植物間コミュニケーションが生じていることが示唆された。
さらに切除処理と曝露処理を比較すると、チゴユリにおいて被害葉数が曝露処理のみで減少したこと、ハンノキとオドリコソウで被害の減少が確認できる期間に違いが見られたことから、被害個体での誘導抵抗性と植物間コミュニケーションでは、誘導される反応に違いがあることが示唆された。