| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-177 (Poster presentation)
【背景と目的】森林における放射性セシウム(137Cs)循環の理解のため、植物体内での137Csの動態を把握することは重要である。福島原発事故後から行われている食品中放射能検査により、2012年に採取されたコシアブラの新芽に137Csが多く含まれていることが報告されている。本研究では、特異的に137Csを吸収する可能性のあるコシアブラについて、その集積特性を評価することを目的とする。
【材料と方法】2013年7月から2014年7月にかけて福島県川俣町の森林において試料採取を行った。コシアブラおよび落葉樹4種の成木から新葉を採取し、ゲルマニウム半導体検出器を用いて137Cs濃度を測定した。また、成木を切り倒して各部位中の137Cs濃度を測定した。これらを硝酸による湿式分解の後、誘導結合プラズマ質量分析装置を用いてカリウム(K)等の元素濃度を測定し、137Cs濃度との関係を調べた。さらに、実生を採取してオートラジオグラフによる放射性Csの分布と染色による菌根菌の感染の観察を行い、両者の関係を調べた。
【結果と考察】コシアブラは同地点に生育する他種と比べて葉中137Cs濃度が高かった。部位別の137Cs濃度を比較すると葉 > 樹皮 > 材の順であり、材では先端や葉痕などの今後新芽を展開する部分で高い傾向が見られた。個体内での各部位中K濃度と137Cs濃度は強い正の相関を示し、樹体内での両者の挙動は同じであることが示唆された。一方で、各個体の葉中K濃度と137Cs濃度に相関性は見られず、個体ごとに両者の取り込みの比は異なる可能性がある。実生の根において放射性Cs濃度が高い部分にはアーバスキュラー菌根菌や内生菌が多く存在する傾向が見られ、これらの存在が137Csの取り込みに影響を与えている可能性が示唆された。