| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-184 (Poster presentation)
現実の生態系は環境と多種の生物、そしてそれらの多種の相互作用からなる複雑ネットワークである。相互作用のうち捕食被食関係は個体群の動態を理解する上で重要だと考えられており、研究が活発に行われている。相互作用のうち、生物間の捕食被食関係のネットワークを書き出したものを食物網と呼ぶ。多数の種が相互作用する複雑な食物網を実際に観測する試みも、特に海洋分野で広がってきている。人は海洋食物網に漁獲という形で直接影響を及ぼすため、複雑食物網を理解することは、海洋生物を持続的に利用するためには重要である。
食物網の基盤となる生産者が生産できる量は有限である。食物網には生産者を食べる一次消費者、さらにそれを利用する二次消費者というように階層構造があり、これを栄養段階と呼ぶ。ある段階の生物が下の栄養段階から受け取った生産量は、呼吸や死亡などで消失するため、上の段階に受け渡されるのはそのうちの一部である。ゆえに消費者が高次になるにつれ、受け渡される生産量はより少なくなっていくと考えられている。この栄養段階間の生産量の受け渡し効率のことを栄養転換効率と呼ぶ。
栄養転換効率という概念は、数種の単純な系で議論されてきた。それを複雑食物網に当てはめようとするとうまくいかないケースがある。栄養転換効率は上位の栄養段階の生物の生産を支配するので、食物網構造を理解するための鍵となる。本講演では栄養転換効率を複雑食物網内でどのように扱えばいいのかを議論したい。