| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-187 (Poster presentation)

冷温帯シバ草原における温暖化が土壌微生物に与える影響

*鈴木真祐子(早稲田大・院・先進理工),吉竹晋平(岐阜大・流圏セ),墨野倉伸彦,田波健太(早稲田大・院・先進理工),友常満利(早稲田大・理工総研),小泉博(早稲田大・教育)

土壌微生物は有機物の分解や窒素の無機化に関与するなど、土壌圏の物質循環の駆動力となっており、近年の温暖化がこれら土壌微生物の機能や活性にどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることが求められている。本研究では冷温帯シバ草原において野外温暖化操作実験を行い、微生物の機能と群集構造の側面から土壌微生物の変化を明らかにすることを目的とした。

赤外線ヒーターを用い、温暖化区の地温が対照区よりも2℃上昇するように制御した実験区を設けた。これらの実験区において、野外における微生物呼吸速度と窒素無機化速度(無機化及び硝化速度)を、小型トレンチ法とレジンコア法によりそれぞれ測定した。また、これらの変動要因として微生物バイオマスと群集構造をATP法とBIOLOGプレート法を用いてそれぞれ評価した。

対照区および温暖化区における微生物呼吸速度は、それぞれ714(145—1354)と550(114—1063)mgCO2 m-2 h-1となり、対照区よりも温暖化区の方が低い値を示した。同様に、単位土壌あたりの微生物バイオマスは温暖化区において対照区に比べ平均で約27%減少した。一方で、窒素の無機化速度は対照区および温暖化区においてそれぞれ4.1と11.7 mgN m-2 day-1、硝化速度はそれぞれ2.2と8.6 mgN m-2 day-1となり、いずれも温暖化区の方が高い値を示した。また、群集構造は温暖化により徐々に変化することが示唆された。以上より、温暖化は微生物群集全体ではバイオマスを減少させ呼吸速度を低下させるが、窒素の無機化に関わる微生物については活性を上昇させ、群集構造の変化を引き起こす可能性があることが示された。


日本生態学会