| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-194 (Poster presentation)
多雪地では、積雪の保温効果によって積雪下でもリター分解が進んでいることが明らかにされつつある。また、リターの種混合によって、リター分解速度や微生物群集が変化することが示唆されている。そこで本研究では、積雪下でリターの多様性の増加がリター分解や微生物群集にどのような影響を及ぼすのかを調べた。
本研究は、最大積雪深が1m以上ある岐阜県高山市の冷温帯落葉広葉樹林において、リターバッグ法を用いて一年間行った。リターは林冠優占樹種であるミズナラ(O)とカンバ類(ダケカンバ+シラカンバ)(B)、林床を優占するクマイザサ(S)を用いた。単種(O、B、S)、二種混合(O+B)、三種混合(O+B+S)の5種類のリターバッグで、乾燥重量、全炭素・窒素濃度を経時的に測定した。微生物バイオマスと群集構造はリン脂質脂肪酸分析法(PLFA法)を用いて調べた。
設置一年後の単種における重量残存率は、O 52%, B 66%, S 73%であり、種間で有意に異なった。広葉樹では、窒素濃度が純増加し、積雪期の分解速度が無雪期に比べて小さくなった。一方、ササでは窒素濃度は増加せず、年間を通して一定の分解速度だった。PLFA分析の結果、広葉樹とササでは微生物バイオマス・群集構造ともに異なっていることが明らかとなり、リターの質を反映しているためと考えられた。広葉樹二種の混合では、分解速度や微生物群集に変化は認められなかったが、広葉樹にササを加えた三種混合では、積雪期に分解速度の低下がカンバとササで認められた。さらに、三種混合のカンバでは、重量残存率と微生物バイオマスは単種の時とは異なるパターンを示した。
以上の結果から、広葉樹とササでは異なった質と分解様式をもち、それら異なる質をもつリターの混合が、養分動態や分解速度に影響を及ぼしたと考えられた。