| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-195 (Poster presentation)
土壌風化の進んだ熱帯林において、リンは鉱物と強く結合し無機態リンの可給性が低下する。このような土壌では、植物や微生物は有機態リンの無機化を活発化させリンを獲得している。土壌中で有機態リンは主にジエステル態リン(DP)かモノエステル態リン(MP)として存在する。植物や微生物が生産するホスホジエステラーゼ(PDE)によってDPはMPへと分解され、さらにホスホモノエステラーゼ(PME)によってオルトン酸(無機態リン)へと分解され植物や微生物に吸収される。このため、MPに比べて、DPの分解プロセスは1段階多い。生体中では有機態リンの多くがジエステル態であることから、リターなどを通して土壌に加入する有機態リンはDPが多いと予想される。このため、植物や微生物は、上流のDPから下流のMPに続く分解の流れに依存していると予想した。本研究では、マレーシア・サバ州のリン可給性の異なる2つの母岩上の熱帯低地林(堆積岩・蛇紋岩)で、この仮説を検証した。蛇紋岩土壌はリン酸吸着率が極めて高く、リン可給性が低い。31P-NMRを用い、NaOH-EDTA抽出液中の土壌有機態リンを調べたところ、両森林でMPの濃度と現存量がDPよりも有意に大きかった。MPの現存量に母岩間の差はなかった。DPの現存量は、蛇紋岩で堆積岩より低下した。リター層・土壌・細根のPME活性はPDE活性より有意に高かった。これらのPME活性は、堆積岩より蛇紋岩サイトで高くなる傾向を示した。土壌に加入するリターや微生物起源のリン画分を推定したところ、MPがDPよりも多かった。これらのことから、2つの熱帯林では土壌中にMPが多く、植物や微生物はMPにより強く依存していることが示唆された。さらに、リン可給性が低下するとMPへの依存度が高まることも示唆された。