| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-200 (Poster presentation)

熱帯低地フタバガキ林において樹種分布がケイ素循環に及ぼす影響の空間的解析

*石澤秀紘(京大農), 新山馨(森林総研), 飯田佳子(ミシガン州立大), Abdul Rahman(FRIM), Azizi Ripin(FRIM), 北島薫(京大院農)

ケイ素は植物の複合ストレスを軽減する有用元素であり、根から吸収された後、葉に集積し、リターによって土壌に還元されるというサイクルを示す。一方、ケイ素の吸収量は樹種間の差が非常に大きいことが知られている。そのため森林生態系において、樹種分布の偏りに起因するケイ素吸収量の空間的変化が、土壌のケイ素可給性に影響していることが予想される。逆に、土壌のケイ素可給性が樹種分布に影響している可能性もある。特にケイ素を高濃度で蓄積する種は、ケイ素の持続的な利用のため、特異的な戦略をとっている可能性も考えられる。しかし、生物多様性の高い森林で樹種分布と土壌ケイ素可給性との関係を調べた研究事例はない。

そこで本研究では、①ケイ素を蓄積する種はリターによりケイ素を土壌上部に還元し、周囲の土壌ケイ素可給性を高める、②ケイ素を高濃度で蓄積する種の分布は土壌のケイ素可給性と空間的な相関をもつ、という仮説を検証するため、半島マレーシアのパソ森林保護区にて調査を行った。まず、土壌、リター、生葉のサンプルを採取し、ケイ素含量を測定した。この値と毎木データから、土壌ケイ素可給性とリターによるケイ素還元量を求め、両者の空間パターンを比較した。次に、樹種を生葉のケイ素濃度によって4グループ(高、中、低、微)に分け、その分布を土壌ケイ素可給性の空間パターンと比較した。

結果、土壌ケイ素可給性とリターによるケイ素還元量との間には相関がみられず、仮説①は支持されなかった。また、ケイ素蓄積量が「中」のグループのみに、土壌のケイ素可給性が高いところに偏って分布する傾向が有意に見られた。このことから、ケイ素を中程度吸収する種の分布が土壌のケイ素可給性と空間的に相関する可能性が示唆された。


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