| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-034 (Poster presentation)
生育地の気候や環境条件に依存した分布を示す種では、歴史的な気候変動に伴う集団の動態によって遺伝構造のパターンが規定されている可能性が高いと考えられる。Melia volkensiiはケニアを中心とする東アフリカの半乾燥地域に特異的に分布する樹種であり、この条件に当てはまると言える。本研究では、ケニア国内におけるM. volkensiiの分布域をほぼ網羅する天然11集団を対象にマイクロサテライト(SSR)11遺伝子座における遺伝的多様性および遺伝構造を明らかにするとともに、Ecological niche modelingによる現在、最終氷期最盛期、中期完新世における潜在的な分布確率を求め、遺伝構造と分布変遷との対応を解析した。
STRUCTURE解析の結果、北部の3集団、中部の4集団、南部の4集団の間で明瞭な遺伝的分化が検出された。Ecological niche modelingでは、最終氷期最盛期から中期完新世、現在と一貫して時間連続的に分布が可能であったことを示す一方、潜在的分布確率が高い地域は北部、中部、南部に分かれて空間的に散在し、それら3つの地域は弱い空間連続性であった(分布確率が低いものの一定の確率で繋がっていた)ことが推察された。それゆえ、検出された明瞭な遺伝構造は主に種の歴史的な分布変遷によって形作られたのではないかと考えられた。