| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-036 (Poster presentation)
本州では白色から淡紫色の花色変異が見られるキキョウ科ホタルブクロ属ホタルブクロ(Campanula punctata Lam.)は、佐渡島においては白色個体しか見られないことが示唆されている。花色にはポリネーターの誘引など繁殖に関わる適応度において重要な役割が存在するため、本研究では、マルハナバチ媒の送粉様式をもつ本種および変種のヤマホタルブクロを対象に、佐渡島ホタルブクロ白色化現象の解明を目的とした。花色変異の要因は、①ポリネーターによる自然選択圧、② 異所的隔離による創始者効果や遺伝的浮動、③ 環境影響などの要因が考えられる。本研究では、佐渡島のホタルブクロの花色変異に影響が大きいと考えられる① と②に注目し、① については、本州と佐渡島間のポリネーター相及び形態の比較を行い、② では遺伝的解析等を行い、創始者効果の有無を検証した。
その結果、ホタルブクロへの訪花昆虫はトラマルハナバチのみであることが明らかになった。本州の有色集団では、先行研究によりトラマルハナバチ含め数種のハナバチ類による訪花が確認されている。また佐渡集団は、本州集団よりも花サイズが有意に大きい傾向があったため、佐渡島のホタルブクロはポリネーターによる選択圧により、大型かつ口吻が長いトラマルハナバチに特化した大型化した形態になっていると推測された。さらに、ハプロタイプネットワークから、距離的に近い新潟市沿岸の白色個体が佐渡市のホタルブクロの主な遺伝的祖先になったことが推測された。しかし、佐渡島のホタルブクロには本州の有色集団を起源としている個体も存在していたため、佐渡島のホタルブクロが白色個体のみになった理由は複数あり、創始者効果だけでは説明できなかった。