| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-041 (Poster presentation)
はじめに:ツル植物は他の構造物に自重の支持をゆだねる寄生的な生活史を持つ。その生活史は旺盛な伸長成長を賦与し,攪乱で生じた植生のギャップを速やかにふさぐなど,植物群落の機能維持に貢献すると考えられる。一方で,この生活史では登攀対象の役割が重要で,光などの資源有効性の変化に加えて,登攀対象の状態を決める宿主植生構造がツル植物の生活史に重要な役割を果たすと考えられる。そこで本研究では,同所的に分布する複数の木本ツルの比較から初期登攀と宿主植生構造の関係を定量化し,ツル植物による登攀様式の分化,宿主植生への適応の可能性について検証を行った。
材料および方法:クズ,フジ,スイカズラ,ツルウメモドキ,アオツヅラフジ,アケビ,ミツバアケビの合計7種を調査対象とし,これらが同所的に分布する鬼怒川河川敷運動公園一帯で計測を行った。計測では,木本ツルが登攀対象に①アプローチし,②取り付き,③登攀対象上で枝分かれする過程・程度を評価した。解析では種間の差異,パラメータ間の相関を検定した。
結果及び考察:登攀対象へのアプローチでは,遠くて高い位置に向かうツルウメモドキ,フジ,遠くて低い位置に向かうクズ,近くて低い位置に向かうアケビ,ミツバアケビ,スイカズラ,アオツヅラフジとおよそ3タイプが確認された。登攀対象への取り付きでは相対的に太いシュートで取り付くツルウメモドキ,フジ,細いシュートで巻き付くアオツヅラフジで特徴的であった。取り付き位置における宿主植物側シュートと木本ツル側シュートの断面積の相関解析では,アケビ,ツルウメモドキ,アオツヅラフジ,クズで正の相関であった。この結果は木本ツルと登攀対象の発達段階が同調するためと考えられる。登攀対象上での枝分かれでは次数がクズで多く,フジで少ない傾向を示した。以上より,解析した木本ツルの登攀は,登攀対象の分布,植生の発達段階に応じて異なることが示唆された。