| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-044 (Poster presentation)
半寄生植物は、自らの光合成によって炭水化物を合成する一方で、水分や無機栄養分を宿主に頼る植物群である。ツクバネ(Buckleya lanceolata)は、半寄生の落葉低木で、土壌中で寄生根により、宿主の根に付着し寄生を行う。ツクバネの分布は、やせた山地の針葉樹林に多いとされる。しかしながら、報告されている宿主の樹種は、多様であるため、特定の樹種の林分に分布が偏る理由は明らかとなっていない。本研究では、岐阜市金華山において、踏査によってツクバネの分布を調査し、数値標高モデルを用いて5mメッシュの空間スケールの地形要素に対するツクバネの分布の解析を試みた。
金華山国有林および岐阜公園の一部(岐阜県岐阜市、水平面積約180ha、標高16m~329m)を調査地とした。調査地内において、南北のライントランセクトと尾根及び沢を踏査した。GPSを使用し、踏査中に目視で発見したツクバネの根元位置を記録した。また、GISソフトを使用し、5mメッシュの標高データから、傾斜、曲率、傾斜方位を算出した。
調査地内を26.7km踏査した結果、ツクバネは838カウント発見され、尾根地形に集中的に分布していた。傾斜と曲率では、分布する範囲で、それらの値に対して、ツクバネの分布密度がピークをもつ傾向があった。ツクバネは、急傾斜ではない凸地形に偏って分布することが明らかになった。
ツクバネは半寄生植物であるため、水分と養分は他の樹木に依存し、一般に地形によって変化する水分と栄養分には分布が制限されないと考えられる。しかしながら、ツクバネは、傾斜と曲率の2つの地形因子によって分布が規定されていた。ツクバネが分布する場所は、寄生しない樹種では、定着が困難な立地条件の可能性があると考えられた。