蛇紋岩地は、貧栄養でマグネシウムなど重金属が多い土壌環境に加えて、乾燥や高温などのストレスが複合的に作用するため、植物の生育には極めて厳しい環境である。一方、蛇紋岩地には、その環境に適応した植物群（蛇紋岩植物）が生育し、特有の植生を形成する。現在、我々は、植物の蛇紋岩適応の分子機構を明らかにするため、キク科ミヤマヨメナ（Aster savatieri, 2n=2x=18）とシュンジュギク（Aster savatieri var. pygmaeus, 2n=2x=18）を用いた比較解析を行なっている。ミヤマヨメナは国内の本州・四国・九州の山地の林内に生える多年生草本である。また近縁のシュンジュギクは、ミヤマヨメナの矮小型変種で、蛇紋岩地に生育する。またシュンジュギクは地理的に離れた３カ所（愛知県・三重県・四国）に分布するため、各地のミヤマヨメナから平行進化した可能性があると考えられる。本解析では、ミヤマヨメナと愛知・三重・四国のシュンジュギクの集団遺伝構造および遺伝的多様性を明らかにするために、SSRマーカーを作成し多型解析を行なったので、その結果を報告する。