| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-054 (Poster presentation)
最多密度で推移する樹木個体群における自然間引きの過程において、個体サイズの増加に伴う個体数の低下のメカニズムとして、個体の光補償点(光獲得量に対する樹冠形成の限界点)とサイズの関係を明らかにすることを目的とし、個体間の樹高成長競争に敗れた個体が枯死する際の樹冠における光環境と樹冠の状態を観測した。
九州大学北海道演習林にあるミズナラの更新試験地では、毎年落葉広葉樹林を皆伐し、その跡地にミズナラ堅果を高密度で播種している。1972年に開始されたこの試験地では、最古の区画が現在42年生に達しており、ほぼ最多密度の状態で推移する連続した林齢のミズナラ同齢林が生育している。
この同齢林分のうち、25年生と40年生林分に生育する様々な樹冠の状態(通常の樹冠の残存/枯死・後生枝の発生の有無)のミズナラ個体をそのカテゴリごとに数個体ずつ選択した。これらについて、サイズの計測、競争状態(樹冠が林冠に到達しているか、被圧されているか)の観察、および通常の樹冠と後生枝による萌芽樹冠それぞれの高さとそれら上下で相対光量の計測を行った。
これにもとづき、通常樹冠の状態と後生枝の発生、後生枝が萌芽樹冠を形成することによって低下した樹高と樹冠の受光量、それらと個体サイズの関係などを解析した。
通常樹冠の枯損は近隣個体に完全に被圧されるまで起こっていなかったが、後生枝の発生はその前の段階で観察された。また後生枝の発生は個体サイズが大きいほど被圧による樹冠サイズおよび樹冠の受光量の低下に反応していた。
これらの結果から、個体生存の光補償点はサイズと共に増大し、最多密度状態において競争に敗れることの影響は個体サイズが大きいほど大きいと考えられた。