| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-117 (Poster presentation)

ミャンマーの農村集落における過去20年間の土地利用変化とその要因

*小柳知代(東京学芸大), 天野正博, 松崎咲彗(早稲田大)

民主化への動きが加速しつつあるミャンマーでは、2000年代後半以降、海外資本の導入等により、積極的な土地開発が行われている。1970年代には国土の6割を占めていた森林が、2010年には5割以下に減少し、面積だけでなく質の劣化も進んでいると言われている。2005年までに首都がヤンゴンから中央部のネピドーに移転した後は、首都周辺での開発圧も高まっている。既存の調査報告書では、国レベルでの森林減少・劣化の要因として、人口密度や標高、国境からの距離等が挙げられているものの、土地利用変化の地域差や、森林減少・劣化を引き起こす要因の違い等の詳細については、未だ不明な点が多い。本研究では、土地条件が物理的、社会的に異なり土地利用変化のプロセスも異なると考えられる2つの地域を対象として、1990年代以降の土地利用変化とその要因を分析することとした。対象地域は、ミャンマー東北部に位置するシャン地区北部と内陸中央部のバゴー山地東部である。衛星画像を用いた土地利用分類の結果から、シャン地区北部では、森林面積が大幅に減少しており森林タイプの種類も減っている事が分かった。森林の大半が畑地に変化しており、台地上の傾斜が比較的緩やかな場所で、トウモロコシなどの商品作物の栽培を目的とした常畑化が進行していると考えられた。一方、バゴー山地東部では、森林局による保全政策の対象になっていることもあり、森林面積そのものは大きく変化していなかったが森林タイプは減少する傾向にあった。また、調査地を南北に貫く主要幹線道路沿いで森林から畑地への変化が進行していることが分かった。今後は、森林の質的な変化やバイオマスの変化についても詳細を分析し、こうした変化を引き起こしてきた社会経済要因との関係を明らかにする必要がある。


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