| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-125 (Poster presentation)
2011年の大津波によって仙台市沿岸部の海岸林は8割が倒壊し,著しく分断された.その後背地の屋敷林や社寺林などの森林も冠水し,これらの森林面積は大きく減少した.本研究では,これらの森林再生に資する情報を得るために,①津波から残存した森林パッチの分布と,②各パッチの林冠層と林床を構成する樹種,③津波後に定着した実生を調べた.
仙台市の津波浸水域のうち,南北は名取川から七北田川まで(約9km)を,東西は貞山堀から仙台東部道路まで(約3km)を調査地とした.2011年5月と2013年9月の空中写真を参照しながら,2014年4〜6月に森林パッチを全て記録した.パッチの林冠層ならびに林床に出現した樹木(樹高≦1.0m)の種名を調べ,津波後に定着した実生については芽鱗痕を数え樹齢を特定した.
大面積パッチは主に海岸林に由来し,小面積パッチは単木のものもあった.林冠層の樹種はパッチ間で異なる傾向があり,海岸林由来パッチではマツの他にカスミザクラ,コナラが,屋敷林や社寺林由来パッチではケヤキやエノキ,シロダモ,ハンノキなどが確認された.稚樹や実生には同一パッチの林冠層に存在しない樹種がしばしば確認され,津波後に定着した実生もあった.林冠木,実生ともに調査地全域で確認できる種と,あるパッチに偏る種が確認され,林冠木はパッチの履歴が,実生は種子散布様式やパッチサイズ,パッチ間距離が影響していると考えられた.
本研究は,JSPS科研費24510332,25830153,平成26年度環境省環境研究総合推進費1-1405の一部を用いて実施された.