| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-126 (Poster presentation)
国内では、2001年策定の森林・林業基本計画以降、森林の有する多面的機能発揮のため、針葉樹人工林の針広混交林化が推進されている。このための施業方法の1つに、主伐の際に侵入していた広葉樹の立木を伐採せずに残す「保残伐」がある。既往研究で、針葉樹人工林の林分に混交する広葉樹の割合が高まると鳥類の出現種数が増加することが示されており、保残伐による生物多様性保全へのプラス効果が期待できる。これらを踏まえ、保残伐の効果的な実施手法や保残伐の普及に向けた各種課題の解決に関する研究が重要と考えられる。
今回の研究では、北海道東部を対象に、民有林所有者へのアンケート調査と林小班単位の森林GISデータの解析により、○針葉樹人工林の森林所有者の中には、保残伐による混交林化を許容する考えの人が一定程度存在する、○経済的な支援策により許容割合が高まる、○広葉樹の樹種に応じて種子の散布距離が異なり、保残樹種を選択すると混交林化の進行速度に差が出ると予測される、などが明らかになった。
これらの結果を踏まえ、○経済的な支援策に応じて保残伐施業の採用割合が異なるならば、目標とする混交の程度に対応した支援策等の施策内容の検討・選択が可能、○広葉樹林から離れた針葉樹人工林では、広葉樹の侵入が少なく、保残対象となる広葉樹が少ない場合も予想される、○森林所有者の意向等により保残対象樹種が限定される場合、混交林化の効果が減少すると予想される、などが考えられる。したがって、今後は、目標とする混交の程度の設定や、混交林化の効果の把握、目標に応じた保残伐等の制度設計と普及に役立つ研究を進めていく必要がある。