| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-128 (Poster presentation)

鳥類が移動しやすい都市とは?~宅地の造成年数と季節を考慮して~

島崎敦(北大院・農),山浦悠一(森林総研・植生),先崎理之,藪原佑樹,中村太士(北大院・農)

都市の公園・緑地は、多くの生物が生息しているほど住民に愛着を持たれ、良好な余暇の場を提供する。多様な生物が公園・緑地に移入し生息するために、生物が移動しやすい都市づくりが必要となっている。生物の中でも鳥類に着目した場合、発表者らの既往研究から、立体的な構造物(宅地と樹木の存在)が移動しやすさを促進することが明らかになっている。しかし、住宅や電線は鳥類にとって新奇な構造物であり、造成初期は移動を阻害し、鳥類が慣れるにしたがって移動を促進する可能性がある。一方で、冬季には樹木は葉を落とし鳥類はより広範囲の空間を利用するようになる。そのため、都市環境での鳥類の移動は季節間で変化する可能性がある。

これらの仮説を検証するために、造成年が1950~2010年と異なる住宅地に計117個の調査区を設置した。そして、調査区内の50mのラインで鳥類を誘引するモビングコールの再生実験を3時期(繁殖期:5~6月、分散期:8~9月、越冬期:12~2月)で行い、森林性の鳥類6種の調査ラインの移動を記録した。ロジスティック回帰分析を用いて、宅地の造成年、季節、調査区内の樹冠密度、住宅密度、電線総延長が鳥類の移動確率に与える影響を調べた。

繁殖期には99回の調査で253羽が、分散期には118回の調査で325羽が出現した。繁殖期における移動確率は造成年が古い宅地において高かったが、分散期にこの傾向は見られなかった。季節ごとの平均移動確率は繁殖期が63%、分散期が48%だったが、有意な差はなかった。また、樹冠率が高いほど繁殖期、分散期における移動確率は高かった。これらの結果に、越冬期の結果を加えて、森林性鳥類にとって移動しやすい都市とはどのようなものか考察する。


日本生態学会