| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-131 (Poster presentation)
近年、ニホンザルによる農作物被害が深刻な問題となっている。この被害に対して、各地域で様々な対策が実施されているが、被害が慢性化・新規化する地域も少なくない状況である。ニホンザルによる農作物被害を効果的に管理していくためには、ニホンザルの生態を十分に考慮した上で生息地管理などを含めた順応的管理を実施することが重要であるとされる。特に、生息地管理を実施していく上では、行動圏選択(生息地と生息状況との関係)を正しく把握する必要がある。しかしながら、加害群の行動圏選択については不明な点が多く、十分に把握されているとは言い難い。自然群では研究が進んでいるものの、被害管理を目的とした生息地管理の対象となる農作物加害群では、行動圏選択に着目した研究は少ない。先行研究によって、農地が優良な採食パッチとして機能し、農地依存によって加害群の行動圏が小さくなるということが示唆されているが、行動圏内に存在する農地の面積や里地里山特有のモザイク環境が加害群の行動圏選択に対して与える影響は未だ明らかではない。
本研究はニホンザル農作物加害群の行動圏選択に注目し、行動圏内に存在する農地の空間分布パターンや里地里山のモザイク環境がニホンザル農作物加害群の行動圏選択に与える影響を評価した。さらに、行動圏のコアエリアにおける餌資源量や採餌パッチの分布様式などの生息地の質が、ニホンザル農作物加害群の行動圏選択に与える影響についても評価を行った。研究対象地は新潟県新発田市であり、そこに生息するニホンザル農作物加害群 13 群れを対象群とした。加害群の位置データは、VHF-テレメトリー法によって取得されたものである。この加害群位置データと土地被覆図を基に解析した。