| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-192 (Poster presentation)

水草堆肥の分解にともなう化学性の変化と菌類遷移

*大園享司,鈴木依子,松岡俊将(京大・生態研)

滋賀県の琵琶湖では水草の大量繁茂が問題となっており、その刈り取りと、刈り取った水草の有効利用が進められている。水草の有効利用の一つとして、堆肥化する活動が行われている。水草堆肥の施与は、作物生長を促進する効果を持つことが確かめられているが、施与された水草堆肥がどのような化学的、微生物的な変化を経て効果を発揮するのかは不明点が多い。本研究では、堆肥化年数が0、1、2年と異なる3種類の水草(M0、M1、M2)を材料に、滋賀県大津市の京大生態学研究センター実験圃場にて、リターバッグ法により6ヶ月間にわたる分解過程を調べた。分解6ヶ月後の重量残存率(初期重量に対する%)は、M0、M1、M2でそれぞれ58%、50%、45%であり、堆肥化年数の長い水草ほど重量減少が速かった。M0では最初の1ヶ月間に全炭水化物の選択的分解がみられた。その後のM0の1〜6ヶ月までの期間と、M1とM2では全実験期間を通じて、酸不溶性残渣と全炭水化物の同時分解が認められた。窒素はどの水草でも、実験期間を通じて純無機化がみられ、窒素供給源としての効果が示唆された。菌類の組成と群集組成を、rDNAのITS領域を対象としたメタバーコーディングで解析した。得られた72,576配列は、225の操作的分類群(OTU、相同性閾値97%)に区分された。OTU数は分解にともなって増加傾向がみられた。クラスター解析により主要OTUは、堆肥化年数・分解時間によらず優占するOTU、M2で特に優占するOTU、分解にともない増加するOTU、M0で特に優占するOTU、の4群に大別された。有機物組成の変化が、これら主要OTUの出現と遷移に影響を及ぼしうることが示唆された。分解にともない増加するOTUにはグロムス目の菌根菌が含まれており、分解の進んだ水草堆肥に定着した菌糸による、相利共生的な養分吸収の可能性が示唆された。


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