| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-193 (Poster presentation)

北海道の平坦林における土壌CO2フラックスの空間変動

*橋本徹(森林総研・北海道)

森林土壌CO2フラックスは、巨大な炭素ストックである森林土壌からのCO2放出過程であり、その変動は炭素循環に大きな影響を与える。しかし、空間的な不均一性が大きいため、土壌CO2フラックスを正確に予測するためには、その空間変動要因を解明することが重要である。土壌CO2フラックスの空間変動には、地形や土壌といった立地要因と樹木や林床植物のような生物要因が関連しているため、その空間変動解明のためにはそれらの要因の分離が必要である。そこで、本研究では、立地変動が小さいと考えられる平坦林を対象に0.4−50 mスケールでの土壌CO2フラックスの空間変動を調べた。林齢約40年のハンノキ人工林(羊ヶ丘試験地)とミズナラ、イタヤカエデ等が優占する天然生林(千歳試験地)に50mラインを設定し、それぞれに63カ所のチャンバーを埋設した。2012−14年の無雪期に、羊ヶ丘試験地では6回、千歳試験地では5回、土壌CO2フラックスを測定した。また、樹木の毎木調査、林床植物の植生調査、土壌の理化学性分析を行った。

どちらの試験地でも、絶対値の違いはあるものの、複数の測定回で一定の空間パターンが見られた。測定時期に依らず、土壌CO2フラックスの空間パターンは固定していることがわかった。また、セミバリオグラム解析の結果、羊ヶ丘試験地では1.2m、千歳試験地では2.3mの空間依存性が認められた。地形が平坦であっても、土壌CO2フラックスに空間依存性があることがわかった。羊ヶ丘試験地ではチャンバーから最近木までの距離が、千歳試験地では林床植物の生物多様性が土壌CO2フラックスの空間変動に対して有意だった。立地変動の小さい平坦林で調べることで、樹木や林床植物といった生物要因が土壌CO2フラックスの空間変動に影響している可能性が示唆された。


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