| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-199 (Poster presentation)
30年前に発生した木曽御嶽山の岩屑流跡地に天然更新したハンノキ属数樹種について、樹種間と立地間の窒素固定能力の違いを明らかにすることを目的とした。岩屑流発生後に標高別に設定された固定調査プロットを調査地とした。標高約2000 mの高標高区、標高約1600mの中標高区、標高約1100 mの低標高区である。高標高区では、撹乱時に表土が残らなかった高標高−表土なし区も対象とした。窒素固定能力は、窒素安定同位体比を用いた手法により評価した。窒素固定の同位体分別を-1と仮定した。ハンノキ属樹種と窒素固定能を持たない樹種(主にカバノキ科樹種:コントロール樹種)が同所的に生育している数地点で、葉の成熟後の8月に樹冠葉の同位体分析を行った。ハンノキ属樹種とコントロール樹種の葉の窒素安定同位体比の差が、中標高区以外の調査区で明瞭に見られた。窒素固定の寄与率は、植生の回復が早い低標高区では、高標高区と高標高−表土なし区に比べて低かった。高標高区の表土の有無では、窒素固定の寄与率の差が明瞭ではなかった。同所的に生育するミヤマハンノキとヤハズハンノキの窒素固定の寄与率には、樹種間差が見られなかった。以上の結果は、2年間とも同様の傾向が得られた。中標高区での評価ができなかったため、同一樹種での標高間比較ができなかった。ただし、中標高区より少し標高が低い場所に生息するケヤマハンノキが、低標高区より高い窒素固定の寄与率を示した。同一樹種でも標高の違いによる植生回復状況の違いにより窒素固定の寄与率が異なることが示唆された。撹乱から30年後でも、ハンノキ属樹種の窒素経済における窒素固定能力に対する依存度が高く維持されていることが示唆された。