| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-202 (Poster presentation)
スギ人工林における間伐施業は,大量の針葉リターを発生させる。リターの分解速度の定量評価は森林施業が炭素動態に及ぼす影響を評価するうえで重要である。間伐施業は林内の光環境を変化させるが,間伐後の光環境は間伐強度に大きく影響される。光環境の違いは微気象に影響を及ぼしリターの分解速度を律速する要因となり得ることが様々な林分で報告されている。もし,スギ人工林においてもそうであれば,間伐によって発生した針葉リターの分解速度を推定する際に間伐強度に依存した光環境の違いも考慮する必要があるだろう。そこで本研究では,林内の光環境の違いはスギ針葉リターの分解速度に影響するか,を検証することを目的として間伐強度の異なるスギ人工林で分解速度を比較した。
鹿児島県姶良市のスギ人工林54年生に2012年3月に2つの異なる間伐試験地を設定した。すなわち,強度間伐区(材積間伐率60%)と弱度間伐区(材積間伐率10%)である。各処理区に5m×5mの実験プロットを5個ずつ設定し,間伐前と間伐直後に全天空写真を撮影し,光環境の指標としてGLI(Gap light index)を推定した。また,各実験プロットにスギ針葉の入ったリターバッグを地表に設置した。これらのリターバッグは2012年5月に設置し,3ヶ月後,6ヶ月後,1年後,1年8ヶ月後に回収し,重量変化の推移から分解速度を評価した。
GLIは強度間伐により大きく変化した。また,大気飽差や気温は夏期に処理区間での差が大きく,強度間伐区で高い値を示した。分解速度は弱度間伐区で速い傾向がみられた。これらの結果は,間伐強度に依存した林内光環境の違いが,スギ針葉リターの分解速度に影響を及ぼす可能性を示唆している。