| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-209 (Poster presentation)
熱帯沿岸域に分布するマングローブ林は、森林生態系の中でも生態系純生産量(NEP)が特異的に高い値を示すことが知られている。この高いNEPには、一年中温暖な気候下に存在するため、植物による炭素吸収量(NPP)が高くなること、潮位変動により土壌が海水に沈むため、嫌気状態となり土壌有機物分解の炭素放出量(従属栄養生物呼吸;HR)が低くなることが起因している。このうち、HRに関しては、干潮時の露出した土壌からのCO2放出量を測定することにより、およその値が推定されている。しかしマングローブ林は、1日の内に潮位が大きく変化(約2m)し、季節によっては1日の2/3の時間帯を海水が覆っている。これらの事実は、マングローブ林における土壌圏炭素の動態が本質的に解明されていないことを意味し、結果としてNEPの評価に大きな問題を残している。
本研究では、マングローブ林における土壌圏の炭素動態の解明を視野に、赤外線ガス分析器を備えた密閉法を用いて、土壌呼吸の季節・日変化の測定を行った。その結果、CO2放出速度は、土壌温度の他に潮位の影響を強く受けていることが示された。また土壌の浸水時には、露出時の約3割程度のCO2が、水面から大気へ放出していることが明らかになった。さらに、浸水や露出の瞬間には、一時的にCO2放出速度が増加する現象が認められた。これらの結果は、従来の推定方法では、土壌炭素放出が大きく過小評価されていることを示唆している。本発表では、調査で得られた土壌呼吸の動態解析のほかに、マングローブ林における土壌圏炭素動態の解明に向けた今後の研究についても議論する。