| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-213 (Poster presentation)

メコン川流域ダム貯水池における生産性とその要因

*広木幹也,冨岡典子,福島路生,村田智吉(国立環境研),Tuanthong Jutagate (Ubon Ratchathani Univ.),今井章雄,小松一弘(国立環境研)

メコン川流域では主として電源開発を目的として多くのダム建設が計画されている。これらのダム建設は、魚類の回遊を阻害したり既存の漁場の喪失をもたらしたりするなど、水産資源の逸失が懸念される一方で、新たな水産資源の創造につながるとの期待もある。本研究ではダム建設によって生じた貯水池において「新たな水産業」を支えるのに必要な生物生産が見込まれるか否かについての基礎的知見を得ることを目的として、既設のダム貯水池の一次生産と、それに関わる要因について調査を行ってきた。

方法:メコン川流域のタイ及びラオスの8貯水池(全窒素, 0.1~0.6mg/L;全リン(TP), 0.002~0.05mg/L)で2012年から2014年にかけて4~8回の調査を行い、一次生産、水質および底泥の理化学性などを測定した。一次生産は13C炭素安定同位体を用いて野外条件下で測定し、別に観測した日射量データなどから年間の生産量を推定した。

結果及び考察:各貯水池の一次生産は140~1100 mgC/m2/d と推定され、貯水池間で、また、季節的にも変動が大きかった。一次生産は水中のTP濃度と正の相関関係が見られたが、山間部の水深の深い貯水池ではTP濃度に対して比較的高い一次生産が認められ、栄養塩濃度のみならず、地形的要因も関わっていることが考えられた。年間の一次生産は65~340gC/m2/yと推定され、これらの値は、これまでに報告されている温帯域の同程度のリンを含む湖沼と比較して高い値であった。年間の一次生産と漁獲量の間には正の相関関係が認められた。水中のリン濃度の適度な増加は漁獲量の増加をもたらすと思われる。


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