| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-215 (Poster presentation)
「フミン物質」は溶存有機物(DOM)の主要成分であり,陸域貯留炭素の流出形態のひとつとして陸域や沿岸域の生態系に大きな影響を及ぼす成分である。また、栄養塩や金属元素のキャリアーとしてそれらの移行挙動を担うと考えられている。しかしながら、フミン物質の直接測定が容易ではないため,フィールドにおける実態調査はほとんどおこなわれていない。我々は,スコットランドの流域河川や湖沼はフミン物質に富む褐色水であり,フミン物質の動態が生態系に及ぼす影響はより大きいと考え,当地の河川や湖沼水に溶存するフミン物質と各種元素の濃度について調査した。ここではフミン物質の濃度分布や溶存元素濃度との関連性について得られた結果を報告する。
英国スコットランド地方で,流域に泥炭地が遍在する3つの有色河川を中心に支流,湖沼を含めた94地点(2013年11月および2014年2月,6月採取で重複地点も含む)の試料水を分析した。分析法はTsudaら(2012)の方法に準じてDOMならびにフミン物質濃度を測定し,ICP-AES分析装置を用いて各種溶存元素濃度(Al, Ba, Ca, Cu, Fe, K, Mg, Mo, Na, Ni, P, Si, Sr)を測定した。
採取水試料のフミン物質濃度は0.25〜30 mgC L⁻¹の範囲であり,DOM中のフミン物質割合(39〜87%)とともに,日本国内の非有色水系と比べて(木田ら, 2013)明らかに高かった。各種溶存元素のうち、AlおよびFe濃度とフミン物質濃度との間に強い正の相関が認められた。また,Fe濃度を河川系ごとに分けるとさらに強い相関が認められ,溶存鉄の移行挙動にフミン物質が強く関与することが示唆された。