| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-221 (Poster presentation)

島根県斐伊川源流域の渓畔林における立地環境と土壌養分特性

*藤巻玲路, 柏木裕香, 久保満佐子, 山下多聞(島根大・生物資源)

斐伊川は島根県出雲平野の穀倉地帯を通り、汽水湖である宍道湖・中海に流れ込む一級河川であり、斐伊川の河川水質の維持はこの地域の農林水産業にとって重要な意味を持つ。本研究は、斐伊川源流部の船通山山麓において、渓流水の水質形成に関わりが深いと考えられる渓畔林の土壌水に溶存する養分特性について調査した。河川源流域に成立する渓畔林は、山腹崩壊によって削剥を受けた谷壁斜面や土砂が堆積した谷底部など、様々な微地形に富んでいる。本研究ではこのような微地形に着目し、谷壁斜面と谷底部に調査地を設け、林外雨・林内雨・渓流水および15cm深の土壌水を定期的に採取し、溶存有機態炭素(DOC)・陽イオン類および陰イオン類の分析を行った。優占する樹種は、高木・低木でそれぞれ谷壁斜面上部ではミズナラ・アセビ、下部ではサワグルミ・ハイイヌガヤ、谷底部ではサワグルミ・ハイイヌガヤであった。試料水のCl-・SO42-・K+の濃度は、林外雨・林内雨・土壌水・渓流水の間でほぼ同等であった。一方で、土壌水のDOC・NO3-・NH4+・Mg2+・Ca2+の濃度は雨水や渓流水に比べ非常に高い値を示した。特に土壌水のNO3-・Mg2+・Ca2+の濃度は谷底部や下部斜面で高くなる傾向にあり、谷底部の表層土壌での活発な硝化とそれに伴うMgとCaの溶脱がおきていたことを示している。また、渓流水中のDOCおよびNO3-濃度は土壌水にくらべ極めて低く、谷底部から渓流への流出過程で活発な脱窒が起きているのかもしれない。


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