| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-225 (Poster presentation)
近年、気温の上昇や降水パターンの変化などの気候変動が顕在化しており、森林生態系への悪影響が懸念されている。生態系プロセスの長期モニタリングから重要な知見を得ることが期待されている。高知市四国支所のヒノキ林において1991年から2012年までの22年間にわたって落葉量と幹成長を測定した。22年間における毎年の落葉の特性と気象条件の相関関係を解析した。秋季の最大瞬間風速が大きいほど、落葉時期が早く、落葉期間が長く、窒素濃度が高い傾向が認められた。しかし、最大瞬間風速と落葉量や落葉窒素量には有意な相関は認められなかった。2004年には巨大な台風が調査地域に接近したが、この年の幹成長と落葉量は、台風前(5年間の平均)のそれぞれ1.17倍、0.82倍を示しており、顕著な低下は認められなかった。幹成長は台風経過2年後に台風前の0.31倍に低下し、4年後には0.99倍まで回復した。落葉量は台風4年後に台風前の0.49倍に低下し、6年後に0.96倍に回復した。この調査地でのヒノキの葉寿命は3.3年と推定されている。台風後に葉の生産量が低下し、その影響を受けて幹成長が低下すると考えられた。葉生産の低下が落葉量に反映されるまでに時間がかかるため、落葉量の低下が幹成長の低下より2年程度遅れると考えられた。以上の結果より、台風直後の葉生産の低下が幹成長を抑制し、その影響は数年間継続することが示唆された。