| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-226 (Poster presentation)
衛星観測を利用して温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)の吸収・発生量の時間的変化を測定する研究が各国でなされている。大気中のCO2濃度は生態系呼吸や光合成、また化石燃料消費によっても増減する。衛星観測で測定するものは大気中のCO2のカラム濃度であり、この情報から発生・吸収量を逆推定するためには詳細なモデルを使用する必要がある。このような目的からCO2の局所輸送モデルを開発している。
ここで開発中のモデルは、著者自身が1980年代から開発を始めたAIST-MMという地域気象モデルをもとにしており、数百km四方の領域の風向・風速、気温・湿度等を計算することができる。モデルを駆動する境界条件は気象庁のメソスケールモデル(MSM)の初期値を用いて計算を行う。もともとAIST-MMには日射量および気温の関数として、日本の夏を対象(従って水ストレスがほとんどない)とした生態系純生産量と呼吸を計算し、CO2濃度を計算するモジュールが含まれていたが、通年の計算には誤差が大きすぎる結果となっていた。このため光合成・呼吸によるCO2の吸収・放出を計算することができるNCAR-LSM(Bonan 1996)を組み込むことを試み、夏期について岐阜大と産総研が観測を行っている岐阜県高山市における2010年8月の観測値と比較してみた。気温、地温、CO2濃度、NEE、呼吸量について計算と観測の結果を示す。現在のところ昼間のNEEの絶対値の最大値はやや過大、夜間のNEEは過小評価、気温はやや高めとなる結果となっている。CO2濃度も変化の振幅はおおむね再現されているが、日々の変動についてはまだ差が大きく、気温・地温の計算値の精度をもう少し向上させる必要がある。