| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-227 (Poster presentation)

日本の火山灰土壌におけるイオウ化合物と遊離酸化物の時空間的親和性

*谷川東子, 吉永秀一郎(森林総研関西), 高橋正通(森林総研)

発表者らはこれまで、i)日本の火山灰土壌のイオウ蓄積量は世界の土壌の中で最も高いレベルにあること、ii)その高いイオウ貯留能はアルミニウムや鉄の遊離酸化物に由来していること、iii)イオウと遊離酸化物の土壌の空間分布は類似性が高く同所的に存在することを明らかにしてきた。今回は「時間的」にもイオウと遊離酸化物の土壌蓄積量に親和性がみられるか、つまり土壌に遊離酸化物が蓄積されるにつれイオウも蓄積されるような同調的変動がみられるかを明らかにすることを目的としている。

この目的のためにテフロクロノロジーに基づき、北海道駒ヶ岳[1929年]、樽前山[1739年]、富士山[1709年]、十和田カルデラ[915年]、榛名山二つ岳軽石[7C中期]という5か所の火山灰壌土を用いた([年号]は噴火年を示す)。それらの指標テフラより上層土壌の全イオウ含量を酸分解―ICPで、遊離酸化物含量を酸性シュウ酸塩、ジチオナイト法で測定し、年代とイオウと遊離酸化物の蓄積量の関係を調べた。

全イオウ蓄積量は年代とともに直線的に増加し、アルミニウム遊離酸化物の蓄積量増加傾向もイオウと同調的であった。ただし遊離酸化物量から推定したアロフェン蓄積量は、イオウのそれとは同調せず、鉄遊離酸化物蓄積量もイオウのそれとの同調性は低い傾向にあった。これまでの結果と今回の結果から、土壌生成年代とともにイオウ蓄積量は21BPから1400BPまで直線的に増加すること、イオウとアルミニウム遊離酸化物は時空間的にその分布が類似性をもつことが明らかになった。


日本生態学会