| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-231 (Poster presentation)

N2O生成プロセスの時間変化パターンの解明に向けた試み-レーザー分光計によるN2O安定同位体比の連続測定-

*山本昭範(東京学芸大),内田義崇(北大),秋山博子,中島 泰弘(農環研)

N2O生成プロセス推定の指標としてN2O自然安定同位体は強力なツールであるが、従来の質量分析計では時間スケールの連続測定は不可能である。そこで、N2O同位体レーザー分光計を用いたN2O同位体の連続測定が検証されているが、大気レベルの低N2O濃度条件において、レーザー分光計を用いたN2O同位体比の高精度連続測定方法を確立した研究例はこれまで報告されていない。そこで本研究は、大気レベルN2O濃度条件において、レーザー分光計によるN2Oアイソトポマー比(平均窒素同位体比:δ15Nbulk15N元素のNNO分子内位置の偏り:SP)の高精度連続測定方法を確立することを目的に研究を行った。

レーザー分光計は、温度制御されている実験室に設置し、さらにレーザー分光計本体の内部、レーザー分光計全体の温度をペルチェ素子および局所空調を用いて精緻に制御した。また、質量分析計を用いてレーザー分光計による測定値の濃度依存性を補正した。その結果、大気レベルのN2O濃度(300-2500 ppbv)におけるレーザー分光計のN2Oアイソトポマー比の測定精度は、δ15Nα:<1.9‰ 、δ15Nβ:<2.6‰ 、δ15Nbulk:<2.1‰、SP:<2.1‰であった。以上から、レーザー分光計の温度を精緻に制御し、質量分析計を用いて濃度依存性を補正することにより、レーザー分光計は同位体比解析に十分な精度でN2O同位体比を連続測定できることが明らかになった。また、圃場においてN2O同位体比を測定した結果、SP値が施肥後の短期間に大きな時間変動を示すことが明らかになった。レーザー分光計を用いた大気レベルのN2O濃度条件におけるN2O同位体比の連続測定は、農業生態系におけるN2O放出メカニズムの解明に重要な情報を提供するものと考えられる。


日本生態学会