| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-232 (Poster presentation)

渓畔林―渓流生態系におけるセシウム137の動態

*金指 努, 綾部慈子, 肘井直樹, 竹中千里, 小澤 創

福島第一原子力発電所事故によって、森林に沈着した放射性セシウム(Cs)は、樹木に吸収され、樹体内を循環し、事故後に展開した生葉からも検出されている。この生葉が枯死・脱落することによって、放射性Csが樹木から地表に移動する。渓流沿いの森林(渓畔林)の場合、この脱落葉(落葉)は渓流にも落下し、渓流生態系の生物にとって重要な養分源になっている。そのため、落葉に含まれている放射性Csが、渓流生態系の生物に取り込まれている可能性があるが、渓流生態系の放射性物質汚染に関する知見は非常に少ない。そこで、渓流生態系における放射性Csの動態を解明するため、福島県の渓流にて、堆積している落葉等の有機物と、その中に生息している水生昆虫を採取し、セシウム137(Cs-137)濃度の経時変化を調べた。

福島県川俣町東部の、主に落葉広葉樹林内を流れる、川幅2m程度の渓流において、2012年11月末、翌年3月中旬および5月中旬に、渓流内に堆積している落葉を採取した。採取した落葉の中で、乾燥重量において優占的な樹種(種または属レベル)に関しては、単独でCs-137濃度を測定した。堆積物中の水生昆虫を、主に落葉を摂食するグループ(破砕食者)、微細有機物を摂食するグループ(収集食者)、他の水生昆虫を捕食するグループ(捕食者)に分類し、それぞれのCs-137濃度を測定した。

渓流で採取した落葉から放射性Csが検出され、森林から渓流への、落葉を介した放射性Csの移動が確認された。渓流に優占的に堆積していたコナラ落葉に含まれるCs-137濃度は、11月と3月で800 Bq/kg程度であり、大きな変化は認められなかった。また、水生昆虫、特に破砕食者から放射性Csが検出され、落葉等堆積物の摂食に伴うCs-137の移動が示唆された。


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