| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-233 (Poster presentation)
陸上生態系を支える土壌サブシステムは、その複雑な三次元構造によって特徴づけられる。この多孔質性、階層性を持つ土壌構造は、土壌微生物・動物の活動や多様性を可能にするハビタットを提供するだけでなく、炭素や栄養塩の循環およびガスや水の動態を規定していると考えられる。つまり、土壌構造は、陸上の生態系機能やサービスの多くと密接に関わっている。そこに、土壌構造の形成・維持メカニズムを解明することの重要性がある。我々は、土壌の主要構成物質である土壌鉱物と土壌有機物の反応という素過程から、土壌構造の形成を捉え直すことを試みている。
ここでは、火山灰土壌を用いて、数ナノメートルから数センチメートルの空間スケールにおいて観察される土壌団粒の階層構造の形成メカニズムを理解することを目的とした研究を紹介する。土壌有機物は、多くの土壌微生物の基質(エネルギー源)であると同時に、鉱物粒子同士を結合させる接着物質として働く。この2つの機能をもつ土壌有機物に着目し、二つのアプローチを用いて異なる階層レベルにおける土壌粒子(有機物・鉱物の集合体を含む)の理化学性を評価した。先ず、機械振とうに対して安定な粒子を比重に応じて分画した。もう一方で、同じバルク土壌をナトリウム飽和させたのち超音波処理を行い(最大分散)、分散した粒子をサイズによって分画した。得られた各画分の炭素、窒素の濃度、同位体比、炭素の分子構造、物理的特性の比較から、一次構造(最大分散後の画分)と、それらが集合化した二次構造(機械振とう後の画分)の関係性を考察する。更に、既存の団粒階層構造の理論と今回得られた結果(特に土壌有機物の平均滞留時間)の整合性を議論する。