| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-236 (Poster presentation)

バライロツリミミズによる森林土壌への影響は土壌タイプと温度によって変化する

小林真(北大•FSC), 南谷幸雄(横浜国大•環境情報), 金子信博(横浜国大•環境情報)

気温上昇が森林の一次生産などの生態系機能へ及ぼす影響が懸念され、その影響メカニズムの解明が求められている。森林の一次生産をしばしば規定する土壌中の無機態窒素は、土壌動物による土壌有機物の摂食および破砕、土壌動物の腸内や土壌中の微生物による無機化を経て生成される。中でも、ミミズなどの大型土壌動物が窒素の無機化へ及ぼす影響の大きさは広く認知されている。これまでの研究から、気温が上昇すると大型土壌動物による有機物の摂食量は一般に増加するが、その増加程度は餌である土壌有機物の質により異なることが知られている。しかし、餌の質による気温上昇への大型土壌動物の反応の違いが、結果として土壌中の窒素無機化プロセスへ及ぼす影響については明らかにされていない。

本研究では、有機物に富んだ鉱質土壌を食する大型土壌動物•バライロツリミミズを2つの餌(蛇紋岩土壌、堆積岩土壌)および2つの温度条件(対照区、温暖区(対象+3.3℃))で育成させ、ミミズによる土壌の摂食量(糞団粒の生成量で指標)と土壌の無機化量への影響を調べた。温度上昇にともない、蛇紋岩土壌で生育させたミミズは糞団粒の生成量を増やした一方、堆積岩土壌で育てたミミズでは変化が見られなかった。また、ミミズの糞団粒の生成量は土壌中の窒素無機化量と良い正の相関関係を示した。その結果、蛇紋岩土壌において気温上昇にともない土壌中の窒素無機化量が増加した。これらの結果は、餌資源である土壌が異なれば、温暖化が進行した際に大型土壌動物が示す反応は異なり、結果として森林土壌の無機態窒素動態や樹木による一次生産量の差異へ繋がる事を示唆している。


日本生態学会