| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-054 (Poster presentation)
京都大学芦生研究林はニホンジカ(Cervus nippon以下シカ)の過採食によって植生が衰退しており、現在餌資源がほとんどない中で何を利用しているのか発表者らは解明しようとしている。昨年の調査からリターフォールや実生を餌資源として利用している可能性が示唆されたが、どの程度重要なのかは判断できなかった。
本研究では餌資源衰退環境下におけるリターフォールのシカ餌資源としての利用価値を評価することを目的に行った。リターフォールを生葉と枯葉で分別し、それぞれの供給量に対するシカの採食強度を比較することで餌資源としての重要性を検証した。調査は全域が25m×25mの区画に分けられて毎木調査が行われているモンドリ谷(16ha)で行った。その中から、スギ(Cryptomeria japonica)が比較的少ない区画を尾根部4、谷部4の計8つの区画を選び、それぞれの区画に4つのリタートラップと2台の自動撮影カメラをビデオモードで7/14~11/11の期間に設置した。2台のうち1台は撮影範囲内の下層植生を全て刈り取った。自動撮影カメラは延べ1824カメラ日設置した。そのうちシカが撮影されたのは延べ101カメラ日で,確認されたシカの採食時間は合計1962秒だった。
採食には季節変動が見られ,8/13~9/10の期間の採食強度は他の季節と比較して非常に高かった。ほとんどの採食行動はあるひとつの谷区画で記録され,空間的に集中した採食が見られた。10月以降に枯れ葉の供給量が著しく増加したにも拘らずシカの採食強度は増加しなかったことから枯葉はシカにとって重要な餌資源ではないことが示された。