| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-056 (Poster presentation)
外来種の個体群動態を駆動するメカニズムは侵入後の経過時間にともない変化すると考えられる。たとえば、浮遊幼生期を持つ海洋底生動物の場合、メタ個体群を包含するような大空間スケールでは幼生供給量の決定におけるストックサイズの重要性が、局所スケールでは個体群成長量の決定における幼生供給量の重要性が、それぞれ侵入後の経過時間にともない低下することが予想される。
これらの予測を確かめるため、北海道東部に侵入したキタアメリカフジツボを対象に、25岩礁で被度と人工裸地における幼生加入量を侵入後10年間にわたり調査し、得られたデータから地域スケールでのストックサイズに対する幼生加入量の依存性と、岩礁間の個体群成長量の違いの原因としての幼生加入量の重要性について、それぞれ時間変化を解析した。
キタアメリカフジツボの平均個体群サイズと出現地点数は、当初、経過年数とともに増加し、2010年ごろにピークに達したが、その後一時減少し、再び2013年から2014年にかけて増加した。そして2010年ごろを境に、地域スケールでのストックサイズに対する幼生加入量の依存性も、岩礁間の個体群成長量の違いの原因としての幼生加入量の重要性も、ともに低下した。以上の結果から、本種の個体群動態を駆動するメカニズムの侵入後の経過時間にともなう変化は先にふれた予測どおりであったと言えるが、それが侵入後わずか数年で生じたことを示している点は特筆すべきである。