| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-070 (Poster presentation)
温暖化が水生生物の生産速度に与える影響を評価するとき、温度に対する動物プランクトンの代謝応答メガニズムを明らかにすることは重要である。しかし、これら微小生物の呼吸速度を正確に測定するのは極めて難しい。これまでの測定方法では、手順が煩雑で、精度も低かった。本研究では、非接触型高感度酸素計を用いることによって、微小甲殻類プランクトンであるカイアシ類(Eodiaptomus japonicus)について、その呼吸速度を正確に測定し、温度に対する代謝速度の応答を詳細に評価した。実験は、8, 10, 15, 20, 25, 28 ºCで順化した成体雌雄を用い、これら3~4個体を飼育水が満たされた3mLの酸素瓶に移し、それぞれの温度において暗黒条件下にて溶存酸素濃度(DO)を測定した。試験水のDOは非接触型高感度酸素計にて1分毎に測定し、DOの減少率から呼吸速度を見積もった。なお、動物を入れない対照区についても測定し、バクテリアなどによる呼吸を差し引いた。本種の呼吸速度(R, nmol/μgDW/day)は水温上昇に伴って増加し、8と28 ºCでは、それぞれ1.9と6.7nmol/µgDW/day、15と25 ºCで計算したQ10は2.06であった。Rは26 ºCの時に最大(6.8)に達したが、以後は減少に転じた。先行研究で得られた本種の卵生産速度(G)と本研究で求めた呼吸速度より、異なる水温・餌環境における本種の成長効率(NGE, G/(G+R))を求めた。NGEは25 ºCより15 ºCで1.4倍ほど高く、その差は餌濃度が低下するにつれて減少する傾向を示した。このことは、温暖化による水温上昇が、NGEの減少を通して本種の成長に負の影響を与えるものの、餌不足によってその影響が緩和されることが示唆された。