| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-071 (Poster presentation)

微胞子虫と微塵子;寄生者の感染率に及ぼす宿主個体群の遺伝構造の影響

*八巻 圭佑, 八巻 健有, 牧野 渡, 占部 城太郎 (東北大院・生命)

微胞子虫と微塵子 ; 寄生者の感染率に及ぼす宿主個体群の遺伝構造の影響

*八巻圭佑, 八巻健有, 牧野渡, 占部城太郎(東北大院・生命)

山形県畑谷大沼のハリナガミジンコ(Daphnia dentifera)個体群では、季節によって、その中に体色の白濁した個体が多数見られる事がある。顕微鏡による観察とDNA塩基配列の解析の結果、これらの個体は微胞子虫(Microsporidia)の1種に感染していることがわかった。微胞子虫は昆虫、甲殻類、哺乳類などヒトを含む広範な生物の細胞内に寄生する単細胞真核生物の一群で、一般に病原性は弱く、寄生に特殊化した菌類であると考えられている。

微胞子虫にはミジンコに特異的に寄生する種がおり、先行研究による室内実験では宿主のミジンコ種が同じでも、その遺伝子型によって感染率が異なるという。また、私たちの野外集団を対象とした研究でも、宿主ミジンコの微胞子虫の感染率や病的発症率は遺伝子型によって異なる事が示されている。しかし、野外ミジンコ集団の遺伝構造が微胞子虫の感染とどのような関係があるかはよくわかっていない。

そこで本研究では、2009年から2012年までの4年間、畑谷大沼のハリナガミジンコ個体群を毎月採取して、マイクロサテライト解析を行い集団の遺伝構造を明らかにするとともに、微胞子虫による感染を分子生物学的な手法により調べた。その結果、畑谷大沼ハリナガミジンコ個体群の遺伝構造は、2011年を境に大きく変化しており、それに伴って、微胞子虫の感染率やその季節的な動態も大きく変化している事がわかった。本発表では、これら宿主集団の遺伝構造と微胞子虫感染率との因果関係について考察する。


日本生態学会