| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-072 (Poster presentation)
フジツボ類には雌雄同体、雌雄同体と雄の共存、雌雄異体の3種類の性システムが知られ、性の進化を研究するうえで優れた生物群である。フジツボ類の雄は非常に小さいため矮雄と呼ばれ、雌雄同体または雌の体表に付着して生活する。理論研究および種間比較に基づき、これらの性システムは、配偶集団サイズの多様性に対応して進化したと考えられている。本研究では、沖縄県・藪地島および奄美大島の干潟で採集されたメナガオサガニ類に共生するフジツボの一種メナガオサガニハサミエボシOctolasmis unguisiformisの性表現を、組織切片の観察により調査した。その結果、他個体上に付着する個体は矮雄、その他の個体は同時的雌雄同体であり、本種は雌雄同体と雄が共存する性システムを持つことが判明した。有柄フジツボ類の矮雄は通常、他個体上の特定の場所のみに付着するが、本種の矮雄は柄部から頭状部の広範囲に付着するという点で特異である。さらに宿主上の個体数と性配分の関係に基づき、本種の性システムが配偶集団サイズによって説明できるかどうかを検討する。