| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-076 (Poster presentation)
オオタカは農地や森林がモザイク状に存在する里山などの農耕地域を主な生息地として利用していると言われており、林縁に隠れて開放地にいる餌動物を急襲するオオタカにとって、これらの地域は適した採餌場であると考えられる。近年は都市部での繁殖例も報告されるなど、本種が多様な環境に適応していることが伺える。河畔林における繁殖例はほとんどないが、青森県岩木川の河畔林では過去およそ10年にわたって繁殖が複数確認されている。
そこで本研究では、オオタカの繁殖に重要な「狩り」の視点から、河畔林で営巣する3ペアについて営巣地周辺の環境をどのように利用しているか調査を行うことでその繁殖特性を考察した。営巣地周辺には水田やリンゴ園が広がっており、推定行動圏内におけるこれらの植生割合が異なる地点間でオオタカの採餌場所の比較も行った。
調査は5月下旬~7月中旬の育雛期に巣内のカメラ撮影を行い給餌内容の分析をすると共に、定点調査法によるオオタカの飛翔経路と狩り行動を地図上に記録した。さらに各地点でオオタカが利用する可能性のある植生における餌動物としての鳥類相を評価するため、各植生内に生息する餌動物の種構成とそのバイオマス、および植生間の移動数をそれぞれプロットセンサス、スクリーンセンサスを用いて調査した。
その結果、各ペア間で狩場は異なったが、いずれの狩場でもムクドリのバイオマスが高かった。また給餌内容についてもムクドリを比較的高い割合で利用していることがわかった。よって、河畔林で繁殖するオオタカはムクドリの多い環境を狩場として選択していることが示唆された。