| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-080 (Poster presentation)

オサムシの太陽照射下での体温上昇:体サイズと色彩の効果

*菅原悠(京都大・理),曽田貞滋(京都大・理)

それぞれの生物には生存に適した温度帯が存在し、適温から外れることで体内の化学反応や物質の構造の維持が困難になっていく。体温が環境によって左右される変温動物は、その形態的特性が適正体温の維持に重要な役割を果たしている。一般的に最大の熱源は太陽であり、変温動物の体温と太陽光は密接な関係にある。昆虫は体サイズが小さく、変温動物の中でも環境の影響を強く受けると考えられる。オオオサムシ亜属をはじめとする日本産のオサムシの多くは主に夜行性であり、太陽照射の影響は小さいと考えられていた。しかし季節的な活動性の変化の報告や明るい色彩を持つ種がいることなど、明るい環境における活動も重要であることが示唆されている。そこで体表に光沢があり緑色や銅色のオオオサムシ亜属と、光沢がなく黒色のクロナガオサムシ亜属のオサムシを対象として、体表が光をどれくらい反射しているのか、分光器で計測して評価するとともに、日光照射のような強い光の照射によって体温上昇に種間差があるのか、太陽光に似た幅広い波長をもつメタルハライドランプを照らして体温を計測した。その結果、オサムシの体温上昇速度に対する影響は体サイズの効果が大きく、色彩の効果は小さいことが示唆された。このことは、オサムシの体色の機能について示唆を与えるとともに、昆虫の体サイズの進化を考える上で環境との関わりが大きいことを示唆している。


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