| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-085 (Poster presentation)

長期モニタリングからみたダイトウコノハズクの繁殖成績の年変動

*岩崎哲也・中西啄実・高木昌興(大阪市大・院理)

小型フクロウの一種ダイトウコノハズクOtus elegans interpositusが生息する南大東島は森林面積が少なく、営巣環境となる樹洞が限られている。また隔離された島嶼のため、他の個体群からの移出入が見られない。今春の繁殖期開始に合わせ、島内各地で巣箱の大規模な増設が予定されており、営巣環境の変化を人為的に引き起こした自然の実験が計画されている。そこで、今後の環境条件の変化に対する反応と比較するため、繁殖成績・なわばり個体の入替りの過去12年間にわたる追跡から明らかになった、本亜種の個体群動態の一部を報告する。平均初卵日は4/13、一腹卵数は2.7個、孵化雛数は2.2羽(孵化率76%)、巣立ち雛数は2.1羽(巣立ち率89%)だった。森林におけるなわばりオスの平均密度は0.48±0.05羽/haで、年間の入替り率は22~35%だった。繁殖個体の最高齢は雌雄共に9歳であり、年齢構成に偏りは見られなかった。また、繁殖個体のなわばり内で、放浪個体(非繁殖の成鳥)の生息が確認された。

以上の結果から、本亜種は高密度で林内になわばりを構える繁殖個体と、なわばりを持てない放浪個体の集団から成ること、毎年3割程度生じる空きなわばりに前年の巣立ち雛を含む放浪個体が新たに定着し、なわばり個体密度は経年的に安定していることがわかった。繁殖個体の集団は高い繁殖成功率を調査期間にわたり維持していた。

巣箱の増設により、営巣場所の増加に伴うなわばり密度の上昇が予想される。なわばり密度が上昇したことによる繁殖個体の齢構成、繁殖成績およびなわばり入れ替わり率の変化などを今後注視していく必要がある。


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