| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-088 (Poster presentation)

ハクセンシオマネキ(Uca lactea)の巣穴をめぐる雄間競争、および繁殖期の放浪雄増加について

小泉智弘*,朝倉彰(京都大・瀬戸臨海実験所),古賀庸憲(和歌山大・教育)

多くの動物は縄張りなどの資源をめぐって同種間で競争する。その競争の決着には、先住性や武器サイズや資源価値などのRHP(資源保持能力)が大きく影響している。

これまでシオマネキ属の多くの種で雄間競争が研究されてきた。しかし、これらの研究は熱帯地方に生息しているため、季節差の影響については殆ど研究されてこなかった。

ハクセンシオマネキ(Uca lactea)は西日本の泥干潟に生息するシオマネキ類で、巣穴をめぐって雄同士で闘争する。加えて、本種の雄個体には地表交尾と地下交尾の二種類の交尾形式が存在し、地下交尾は他の雄に妨害されることなく父性を獲得することが可能である。そのため、繁殖期の雄にとっての巣穴の資源価値は大きく上昇することが予測される。この資源価値の変化は闘争勝敗の結果にも影響し、季節によって闘争勝敗の結果は大きく変化するだろう。

本研究では、ハクセンシオマネキの巣穴をめぐる雄間闘争の勝敗要因の季節変化について詳細な調査を行なった。その結果、季節によって勝敗決定要因となるRHPの変化が確認された。これに加えて、闘争中に見られる巨大ハサミで自らの巣穴に蓋をする「巣穴ふさぎ行動(Flat-Claw)」の、闘争に対する影響について報告する。

また、本研究における観察の際、非繁殖期から繁殖期に移行する際において巣穴を持たず放浪する雄が増加する傾向が確認された。本発表では、放浪雄個体がなぜ繁殖期開始時に増加するのかも考察する。


日本生態学会