| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-101 (Poster presentation)
一部の霊長類では、ハンドラーと呼ばれる親以外の個体による、他個体が生んだアカンボウへの接触行動(infant handling, 以下IH)が日常的にみられる。IHの機能については複数の仮説があり、どの仮説が支持されるかは種に特異的な社会構造により異なるとされている。本研究では、ニホンザルの野生群を対象とし、IHの意義を母子・ハンドラーの両視点から理解することを目的としている。今回の発表では、IHの頻度に影響を与える要因についての分析結果を報告する。
宮城県金華山に生息するニホンザルA群において2014年に生まれたアカンボウとその母親12ペアを対象に、生後3か月を過ぎるまで個体追跡観察を行った(総観察時間:489時間)。IHが起きた場合には、その内容、ハンドラー、開始時間と終了時間、母子の反応を記録した。さらに、母子間距離を一分おきに記録した。IHの内容はpositive、negative、neutralに、母親の順位は高、中、低に分けた。得られたデータを用いて、アカンボウの性別・週齢、母親の順位、ハンドラーとアカンボウとの血縁関係とIHの頻度の関係性について分析した。
その結果、IHの頻度は9週目にピークを迎え、その後減少していた。また、高順位の母親のアカンボウ程よりIHされていた。一方でアカンボウの性別、ハンドラーとアカンボウの血縁関係はIHの頻度に影響していなかった。
以上の結果から、IHの頻度にはアカンボウの週齢、母親の順位が影響を与えることが示唆された。今後はハンドラーの年齢、性別、順位などについて、より詳細な分析を行う。