| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-102 (Poster presentation)
アカネズミ(Apodemus speciosus)とヒメネズミ(A.argenteus)は、日本全国に広く分布する日本固有種であり、その配偶システムについては、いくつかの研究がなされている。アカネズミは一夫多妻または乱婚、ヒメネズミは一夫一妻とする研究と、一夫多妻であるとする研究とがあり、両種ともその配偶システムについて結論は出ていない。マルチプルパタニティとは一腹の子の父親が複数いることであり、妊娠観察数に対するその割合は、メスの複数オス交尾の頻度の指標となる。従って、マルチプルパタニティの割合が高い種は一妻多夫または乱婚であると考えられる。本研究はアカネズミおよびヒメネズミのマルチプルパタニティの割合を明らかにし、両種の配偶システムを検討することを目的とした。2007〜2008年に北海道帯広市(アカネズミ)、2013〜2014年に北海道雨竜郡幌加内町(アカネズミおよびヒメネズミ)において捕獲調査を行った。妊娠メスは出産まで飼育し、母子のDNAからマルチプルパタニティの判定を行った。その結果、アカネズミはマルチプルパタニティの割合が高いこと(約63%)、オスが複数のメスと配偶している例が観察されたことから、配偶システムは乱婚だと考えられた。ヒメネズミでは2年間にわたりある程度の割合のマルチプルパタニティが観察されたこと(約28%)、またオスが複数のメスと配偶している例が観察されたことから、配偶システムは乱婚であると考えられた。マルチプルパタニティの割合はアカネズミで高かったため、アカネズミはヒメネズミと比較して乱婚の度合いが高いと考えられた。しかし、アカネズミのマルチプルパタニティの割合が2つの調査地で異なったこと(帯広78%、幌加内約38%)から、今後は配偶システムの種内変異についても検討が必要であると考えられる。